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 東京統一管理職ユニオン第31期 
2022~2023年度方針
(要旨)

2022年11月19日
第32回定期大会決定


★職場の仲間づくりと労働相談からの組織化で、組織拡大を!

私たちを取り巻く情勢と課題

1.はじめに
 新型コロナパンデミックは3年にわたって猛威を振るってきた。この時こそ協調・協力して対処にあたるべき国際社会は、ウクライナ戦争に象徴されるように、逆に分断を極め、トランプの「アメリカファースト」にみられるように、それぞれが自らの利害のみを追求するようになっている。強圧的に人々を支配する「独裁的・権威主義的国家」が増える傾向にあり、人々の意思を反映する「民主主義国家」が減っていると言われる。世界をみても、ウクライナ戦争で一方的に侵略したロシアに対する支持は根強くあり、特にアジアやアフリカの人々の社会がどこまで暮らしやすくなるかも、大きな課題として見えている。
 日本でも、「民主主義は民主主義的手続きによって死んでいく」状況が進行中だ。安倍政治が、民意を無視して嘘で固め、人々をだましながら金持ち・支配層の利益を図ってきたにもかかわらず、その安倍の国葬を行なうという、ほとんど信じられない事態が進んだ。
 円安と物価の急騰で金持ちはますます富を得、貧乏な庶民は生活苦に直面し、社会的格差が大きく拡大し、社会の分断が進んでいる。にもかかわらず、労働組合運動は社会的影響力を失い、連合は日本の労働者を代表できないばかりか、一部では政府・資本家にすり寄るかのようにも見える。

2.日本の社会
①アベノミクスの破綻と円安
 日本では、アベノミクスの破綻の結果日銀が膨大な量の国債を保有しており、要するにお札を刷って国債を買い支えている。金利が1%上がると3.5兆円の国債費が増えるために金利が上げられず、その結果の米欧との金利差から必然的に円安がさらに進むことになる。ウクライナ戦争もあるが、基本はそれだ。
②労働者の賃金下落と格差の拡大
大企業は海外で収益を上げてそれが円安で膨らむから、大幅に儲けが増えている。しかし、庶民が買うエネルギーや食料品の値上げは、結局庶民自身が負担することになる。急激な物価高騰は、消費者物価指数こそ2%台の上昇と言われるが、生活必需品はすでに5%以上の大幅上昇だ。言われるように、日本だけが1997年以来実質賃金が突出して減っており、一方で大企業は膨大な内部留保をため込んでいる。しかも、導入以来の消費税の総額は、その間の法人税と所得税の減額分で食いつぶされ、結局日本の金持ち大国化を作り出した。上場企業の報酬1億円超の役員は663人で過去最、最高の報酬は43億円だという。
 この10年ほどの物価は、生活必需品が1割以上値上がりしているのに対し、ぜいたく品はほぼ横ばいだ。物価を構成する品目は、食料品や電気代、医薬品など「基礎的支出項目」と、外食や旅行、車といったぜいたく品が中心の「選択的支出項目」に分けられる。日本は食料やエネルギーの多くを輸入に頼り、海外の動向で生活必需品は物価が上がりやすく、家計に占める生活必需品の割合は低所得者ほど大きい。世帯年収200万円未満だと58%が生活必需品で占める。年収が増えるとともに、割合は下がり、900万円以上は45%だ。
 そこで、中低所得層ほど生活が苦しくなる「スクリューフレーション」と呼ばれる現象が深刻化している。「締め付け」(スクリュー)と「物価上昇」(インフレーション)を合わせた造語で、物価上昇で中低所得層の生活が締め付けられる、という意味だ。低所得層と富裕層の間で格差が広がる。今やこのスクリューフレーションによって、私たち労働者の生活が苦しめられる状況である。
再分配に力を注ぐかに見えた岸田の「新しい資本主義」は、結局株などに投資して自分で稼げと、要するに博打で稼ぐことを推奨する始末である。今必要なのは、日本がどのような産業で生きていくのか、その産業政策を示すことであろう。すでにいろいろ報告されているが、各地方・地域に根ざした産業を育成し、エネルギーも再生可能エネルギーを軸に地産地消できるようにすべきだし、防衛費の前に食糧自給の道を考えるべきだ。
③生活一時金獲得が必要
こうした生活困難を突破するために、この秋、生活一時金獲得闘争を強力に進めることが求められる情勢である。
私たちの力も大きなものではないが、日本の労働運動の困難が目立つ。連合は日本の労働者を代表していないばかりか、大企業労働者の利害が資本と密接不可分であると考えているようで、私たちとの乖離が大きい。背景にある中小零細企業の苦境とそこで働く私たち労働者の闘いが、やはりポイントであろう。
④最低賃金も年度内に再改定しなくてはならない
中央最低賃金審議会目安小委員会が8月2日に示した最低賃金引上げ額はC、Dランク30円、A、Bランク31円だった。私たちから見れば額は小さいし、全国一律化からはほど遠いものではあったが、その金額は賃金引上げの社会的要求に応じざるを得なかったことの結果でもある。実際、茨城県では知事が事前に経営者団体に最賃大幅引上げを要請しているし、各地の審議会での議論も厳しかったと伝えられている。だから、上記目安を越えて、3円引き上げる県が大幅に増えた。賃金引上げの気運が沸き起こっており、私たちにとっては好機だ。
⑤民主主義破壊と改憲の動き 原発と地球環境問題
政治の腐敗??意見を言わせない、嘘を平気で言う政治の延長に「戦争する国」づくり・憲法改悪が控えている。私たちの運動が「戦争する国」づくり・憲法改悪を押しとどめねばならない。
 この間、突如として「電力不足」が喧伝され出し、ついに岸田が原発の「再稼働」をも越えて「新増設」を言い出した。福島の過酷事故を教訓に、「核のゴミ」問題解決の糸口も見えない中での原発推進に対する、反原発の闘いも求められる。
 地球環境危機もまた深刻であり、労働組合の社会的役割への期待に答えねばならない。

3.個人加盟「ユニオン」のあり方をめぐって
 最近共同通信の記者からアンケートの依頼が届いた。テーマは「個人加盟ユニオンの現状-高齢化と財政問題」だ。本来個人加盟ユニオンは、地域の労働組合がその財政も人手も担って運営されていた。私たち「管理職ユニオン」は、東京労組の決定で作られたが、やがて財政的にも役員も自前で支えるようになり、「自立」することとなった。しかし、これは全国的に見ると例外的であろう。
 現在、私たちは危なっかしいながらも自前の組織維持ができている。ただ、専従者をおけないなど、困難も抱えているのであって、課題は大きい。役員のなり手も少ない。財政的にも現状では「解決金」で組織運営をすることは困難だ(労働組合は組合費で運営すべきであることは当然だが)。しかし、全国のユニオンは財政難や高齢役員の引退で、私たち以上に困難に直面しているというのが実態のようだ。こうした中、私たちは東京統一管理職ユニオンの今後をどう見通すか、大きな課題を抱えている状況だ。

31期(2022-23年度)活動方針

1.引き続き正社員・「管理職」中心に組織し、職場の多数派へ
 私たちユニオンは、やはり中高年の管理職や、正規雇用の労働者が相談・加入の中心である。また、女性の相談のほとんども正規・管理職の労働者である。引き続き管理職・正社員層に着目し、その労働者の組織化を推進する。非正規労働者の相談も増えようが、その場合は他労組を紹介するなど、私たちの「守備範囲」を固めよう。「身の丈」を知って、できることに注力しよう。
 その上で、職場に複数の組合員を作りだそう。職場に規定力をもつユニオンに脱皮しよう。職場の多数派を獲得し、労働条件決定に力を持つことを目指す。
 それぞれの組合員・仲間が働く職場での運動を組織する。そのために、組合員の職場で起こっているいろんな改変(労働組合用語で言えば「合理化」)を把握して、周りの人たちと相談し、各自の不利益にならないように交渉しよう。それが職場闘争だ。職場の現状の評価、職場の変化に関心を持つことから始めよう。
私たちユニオンの組合員は、問題が解決してしまうと、それ以上の労使関係を作ろうとしない傾向がある。誰でも定年は迎え、再雇用に直面することもある。その時、自身の労働条件を会社と協議し、向上させるのが組合員の役割だと自覚し、要求をしよう。それを周りに広げよう。その運動をユニオンは全力で支える。

2.組合員を増やそう!
 それを踏まえて、前年度までに引き続いて以下の諸点に取り組みたい。
(1)相談の仕組みの充実
 =略=
(2)ホームページ、組織化ビラまき
・ホームページに関しては、支える組織態勢を充実させ、一部の組合員の負担にならぬようにする。その上で、職場支部作りに役立つ側面や、高年法に関することなどをさらに充実させ、内容を広げる。
・目的を確認しつつ、駅頭ビラまきの定期化を再開する。
(3)問題を解決した後の組合員の活動を保障する道筋、職場闘争の準備
・職場で働きながらユニオンに所属している組合員に関して、一人一人が現に働いている職場における労働条件の改善に取り組むことの意義を明らかにする。
・問題解決は、職場に残るための条件整備であることを確認する。
・争議状態にある時も含めて、職場に仲間をつくることの重要性を徹底する。仲間を作れない場合、その理由を、ユニオンとして議論する。
・そうした中から、ノーベルバイオケア支部やスリーエム支部、AAゼネラル支部の経験に学び、全組合員が複数の仲間を職場で獲得し、支部を作れるように準備したい。春闘要求を提出することや、36協定締結の労働者代表になることなどに取り組む。労働者代表を選挙で選ばせること、その選挙に立候補することは極めて重要なので、その実現を目指す。
・前述のように、自身の労働条件を会社と協議し、向上させるのが組合員の役割だと自覚し、要求をしよう。
(4)高年法問題に積極的に対処
・これまで蓄積してきた経験を、ユニオンとして整理する。
・裁判例も積み重なってきているので、それらを検討する機会をつくる。
・また、高年法が改定されるのと平行して政府が70歳まで働くことを前提に年金制度を設計しようとしていたり、年金だけでは2000万円が不足するとの発表がなされたりした。年金問題にも積極的に対処することとしよう。
・一昨年10月に、非正規の格差をめぐって、最高裁判決がいくつか出た。最高裁はこれまでの運動の成果を押しとどめ、格差解消と逆行する判断を示した。こうした事態から、今後「同一労働同一賃金」問題として、たとえば定年再雇用の労働者の相談が増えることも想定して、準備をする。
(5)その他
・就業規則の不利益変更、パワハラ問題など、傾向的に相談が多い案件について、経験を蓄積しつつ、対処方を確立する。
・ユニオン運動を前に進めるために職場支部(分会)を拡大しよう。春闘にあわせて賃金引上げを要求し、団体交渉をするなど、たとえ職場における組合員が一人だけであっても、職場における労使関係を目に見えるものにしたい。こうした「職場闘争」の実現こそが、私たちの組織拡大の大きな基礎である。職場闘争を通じて組合員を拡大し、社内の労働条件を規定する運動に取り組もう
・労働者の権利拡大のための全国的な運動と連帯し、その闘いを支援する。

3.対外共闘
 私たちのユニオンは、コミュニティ・ユニオンネットワーク(全国・首都圏)及び、中小労組政策ネットワーク(中小ネット)の二つのネットワークに所属し共闘関係の二本柱としてきた。両ネットの一員として更に関わりを強めていく。また「雇用共同アクション」にも参加している。この活動も強めよう。
そうした枠組みの中で、全国一般全国協議会や東京労組との関係も作られており、共闘関係の拡大にさらに取り組みたい。とりわけ、東京労組とは日常的に同じ空間にいるので、できるだけの協力関係を構築すべく、力を尽くしたい。
 その他、コミュニティ・ユニオン(首都圏・全国)ネットやNU東京との共闘を更に強化しよう。特にNU東京とは、これまで呼びかけられていながらこちらの不十分さのために取り組みができないケースがあったので、具体的な争議相互支援や日常交流を実現したい。当面、そのための協議を始める。
 私たちユニオンは、従来、外の組合の争議支援などに積極的ではなかったが、東京労組や中小ネットなどの争議支援に取り組んで、共闘を拡大したい。

4.日常の組織活動等
・月に1回の争議交流会と学習・交流会を定期的に開催する。
・コロナ禍が一定収束したときには、活動を組織的に集約するために、月1回(一応火曜日を想定する)夜、役員や執行委員が定例的に集まって「業務委員会」を開催する(組合員の参加も歓迎する)。そしていろんな課題を議論する。現在は、関係者が「相談」することはあるが、それは組織的に持たれていない。そのため、活動が部分的、個人的になりがちなので、それを克服したい。当面は、これをオンラインで行なうことも考える。
・前述のとおり、(可能な範囲で)月1回ないし2回、金曜日の夜に組合員がユニオン事務所に集まる。そして、さまざまな相談を集中する日とする。そこに組合員が集まって相互に助け合って相互に相談に応じる。その金曜日夜は組合員が、特別な案件を抱えていなくても集まる時間として設定しよう。
・争議や職場の困難を抱える組合員の団体交渉には、できるだけ他の組合員が参加し、協力して交渉に当たることにしよう。
・繰り返すが、ふくろう便編集委員会、高年法問題対策会議、PIP対策会議、〇〇争議対策会議など、できるだけオープンに、複数の組合員が結集して議論しながら方針を生み出す仕組みを作る。
・運動に伴う「作業」は、経験がなくてもやる、という作風を取り戻す。
・労働相談の受け手も、そんな経験から生み出す。
・様々な集会に参加し、他労組との交流にも参加する。
・事務所はそのような準備の場所であり、そのために活用する。
 =以下、略=

5.労働組合の社会的課題にも取り組もう
(1)大企業の内部留保を吐き出させ、累進課税を強化、生活一時金獲得へ!
 前述のとおり大企業の内部留保は516兆円、まずはこれを吐き出させ、同時に中小企業助成策を拡大させ、生活一時金を勝ち取る闘いに着手しよう。
 また大企業の好調な業績を反映して報酬1億円超の役員が656人もいて、その数は過去最多、格差拡大の象徴的な事態だ。政治にも再分配強化を求める。
法人税の税率は42%から、新自由主義政策のもと年々下げて現在23.2%。所得税の最高税率も60%から45%まで引き下げられた。一方消費税は3%⇒5%⇒8%⇒10%と引き上げられている。1990年度と2018年度の税収の推移を比べると、税収の総合計が60兆1000億円から60兆4000億円と変わらないのに、法人税と所得税は減っている。その減少分を丸々消費税が埋めている訳だ。法人税を払っている6割は大企業で、最高税率の所得税を払っているのは富裕層。この30年間、大企業と富裕層は減税で恩恵を受け続けてきたわけだ。この税率を旧に復し、累進税率を強化して、大企業・富裕層に正当に負担をさせ、再分配を強力に進めることが不可欠だ。
(2)労働は時間で評価されることを確認し、フリーランス・個人事業主だから労働者でないとする攻撃をはね返そう
 労働現場では、労働と時間を切り離す動きがますます強まっている。とりわけコロナ禍で「在宅勤務」が強調され、その傾向があおられている。しかし、労働は時間と切り離しては評価できないし、リモートワークや在宅勤務のできない「エッセンシャルワーク」は時間管理こそが重要な課題である。
 今年7月厚労省「これからの労働時間制度に関する検討会」が報告書を公表した。政府・資本の側が「労働時間問題」を重要な問題としているからだ。「労働者の健康確保が確実に行なわれることを土台とする」とは言いつつ、「労使双方の多様なニーズに応じた働き方を実現できるようにする」と明言されている。
 今資本がほしいのは、単なる長時間労働ばかりではなく、請負のように、労働時間は関係なく、「成果」さえだしてくれればよいという働き方である。ストレートに労働時間管理を外すことは、結局労働基準法などを適用される労働者としては扱わないということである。「個人事業主」化である。こうした攻撃に断固として反対せねばならない。
 NTTは、在宅勤務を基本として、職場への出勤は「出張」扱いになるという。しかし、「出張」では労働時間管理ができず、無制限に働かされることにつながる。「労働は時間と切り離せない」という原則が破壊されてはならない。

以下、アトランダムに、労働時間問題との関連で、職場の課題を挙げる。
①残業は使用者の一方的命令ではできない。必ず、労働者本人の同意を得る。36協定を厳格に結ぶ 36協定の締結に当たって、残業の「本人同意」を無視することが起きている。これを許さない。時間は極力短く、特別条項は、原則認めない。労働に対しては対価を求める原則を徹底する。
②固定残業代制度を許さない 仮に認めるとしても、対象時間を明記し、その時間も極力短くする。それを越えれば残業代が支払われることを(当然ながら)明確にさせる。サービス残業にはさせない。
③在宅勤務が行なわれるなら、時間管理を厳格に 客観的に認められる時間管理を進めさせる。サービス残業をさせない。
④シフト制について、労働者への不利益を許さない いわゆる「シフト契約」には、最低勤務時間を決めるなど、労働者が不利益にならない措置をとる。なお、この問題は、必ずしも非正規労働者の問題であるばかりではなく、「変形労働時間制」を介して、正規職員にも適用されている課題でもあることに留意する。
⑤高度プロフェッショナル制度反対、裁量労働制拡大反対、さらに両制度廃止を  専門職の人を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル(高プロ)制度で、在社した時間と社外の労働時間が月間400時間以上だった人が、2カ所の職場でいたことが明らかになった。一般労働者の場合に「過労死ライン」とされる100時間を125時間以上も上回る。当初から指摘された働き過ぎを助長する懸念が現実化している格好だ。これらの制度は、職場で導入させないことが何よりも大切なので、職場での闘いの課題としても確認する。改めて裁量労働制拡大に反対、むしろ時間管理のできない労働形態の廃止を!
⑥ウーバーイーツで働く者など、多くの「フリーランス」は労働者だ ウーバーイーツに典型的に見られる「フリーランス」問題。すべてのフリーランス(その多くはギグワーカー)にはすべての労働者保護法制が適用されるべきだと、労働者性を主張して、現実を認めさせよう。個々の事例で「個人事業主」として契約しているからといってそれを鵜呑みにせず、労働者性の枠組みを広げよう。
(3)労働法制の課題
 私たちユニオンは「雇用共同アクション」に参加して、共に運動をしている。そこでの議論も参照しながら、最近の労働法制上の課題を以下のように指摘する。裁量労働制拡大法案や解雇の金銭解決法案は、来年の通常国会に上程される可能性がある。
①自動車運転労働者の改善基準告示(インターバル規制・拘束時間等)改訂が迫っている。インターバルについては「11時間を原則とし、9時間を下回らない」として、義務化は「9時間」となる。しかし、9時間では健康を維持できず、世界水準からもほど遠いことを訴え、「11時間」の実現を目指そう。
②多様化する労働契約のルールに関する検討会が「多様な正社員の労働契約関係の明確化について」と題する報告書を発表し、労政審に報告される。内容は「無期転換ルールの見直し」「限定社員の労働契約関係の明確化」「無期転換ルール10年特例の雇止め問題」などだが、限定正社員の規定など、むしろ均等待遇原則に逆行することが含まれており、受け入れることはできない。  
③資金移動業者の口座への賃金支払い(要するにペイペイに賃金を払い込むということ)がほぼ決まった。労基法の賃金の「通貨払い原則」の緩和が図られる。
④解雇の金銭解決制度に関しては、法技術的論点をまとめた「報告書」ができて、労政審に4月に報告されている。今のところ使用者側からの申し立てはできないと言われているが、いったん成立すればどんどん中身が拡張されるのが普通であり、この制度を作ることはなんとしてもくい止める必要がある。
⑤労働時間法制の規制緩和は具体的に検討されており、特に前述の通り、裁量労働制については法案が一度作成されているところから、一気に進められる可能性がある。十分に注意を払いたい。
⑥外国人技能実習制度・特定技能制度の見直しが、法務省を中心に進められている。5月から6月にかけて「技能実習制度廃止全国キャラバン」が展開されたが、制度廃止に向けた取組みが求められている。
⑦フリーランス保護法制が経済産業省を中心に検討されているというが、詳細は見えない。むしろフリーランスを労働者としてどう保護するかを、私たちが発信していくべきだ。東京地裁がフリーライターへの安全配慮義務を認める判決を出したこともあり、労働相談でも案件が多いので、運動でも前進させよう。
⑧労働者派遣法関連では、37号告示(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準 (昭和 61 年労働省告示第 37 号、最終改正 平成 24 年厚生労働省告示第 518 号)の「偽装請負」をめぐって、東リ事件の最高裁判決がでた。偽装請負に関しては厚労省の「指導」は弱いので、これを機会に摘発し、社会問題化したい。
※2022~23年度は、2022年11月19日第32回定期大会から、
 2023年11月の次回定期大会までの期間です。