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 東京統一管理職ユニオン第31期 
2023~2024年度方針
(要旨)

2023年11月18日 
第33回定期大会決定


私たちを取り巻く情勢と課題
(情勢報告要旨)

1.はじめに
 日本に限らず、世界的に格差が拡大し、分断が進んでいる。個々人の生活状況はもちろんのこと、政治のあり方、経済の状況、国と国の間の競争力など、すべての側面で格差が広がり、国際協調も困難に向かっている。
 1989年の「冷戦終結」によって「グローバル化」によりボーダーレスな世界が来るかと思われた。しかし、30年以上経た現在、逆に新たな「ボーダー」が国際的にも、日本も含めた各国内でも生み出されている。国際的に見れば先進国と発展途上国の順位の入れ替えであり、とりわけ日本はインターネット中心の世界産業構造に対応できず、競争力がかつての1位から36位になっている。一人当たりGDPでは既に、シンガポール、台湾、韓国に追い越されており、アジアでも「一流国」ではないのである。
 各国内でも産業構造に対応できた者とそうでない者の間に分断が生じ、例えば移民受入問題などはその典型である。中国が力を強めて米中デカップリングと言われる事態が広がり、ついにアメリカの対中輸入額が国別ではカナダ、メキシコに抜かれて首位から陥落したという。一方、ここでは触れられないが、今夏の猛暑に象徴される地球環境問題など、人類の存続に関わる事態が進んでいる。
 とりわけ日本は世界情勢に乗り遅れている。国際経済関係でもアメリカのように中国と距離を取ることは不可能だが、アメリカ追随の政府の動きは泥沼へ向かうかのようである。日本は「危機の時代」にある。
 今のユニオンの活動は、世界・社会を語れる状況ではないが、だからこそ、世の中が如何にひどいことになっているかを考えるために、以下多少長めに提起する。

2.世界の動き――イスラエルのガザ侵攻、ウクライナ戦争と世界
 ハマスの奇襲攻撃に端を発したイスラエルのガザ侵攻は、ジェノサイドの様相を帯びている。「人道」も無視され、子供が殺されている。もともとは大国の二枚舌から生まれたパレスチナ問題、少なくともパレスチナ国家とイスラエルが共存する状況をつくるのが最低限の国際社会の責任だ。そして直ちに停戦!
 ウクライナ戦争も、NATO軍事同盟の主力戦車・巡航ミサイルが投入され、ロシアのベラルーシ戦術核配備が強行される中で、和平への動きは見られない。岸田政権は、NATOの一員であるかのように振る舞っている。
私たちは日本政府に対しては、戦争介入を止め、反核・平和外交を行なえ、即時停戦のために働きかけよ、と訴えねばならない。
 戦争は世界の分断の象徴でもあるが、他方米中対立も深まっており、東アジアでは「台湾有事」を煽る動きもある。日本政府もそれを奇貨として、自らの軍事力増強に走っている。「広島G7サミット」では脱中国シフトで、半導体・レアメタルはじめ重要物資のサプライチェーン(世界的供給網)の再構築を確認した。他方で、中国の一帯一路戦略と米日等のアジア太平洋戦略という覇権主義が、台湾・沖縄を始めとする南西諸島(琉球諸島)をめぐる緊張として高められている。
 日本は戦場から遠いから良かった、ではいられないことだけは指摘したい。岸田政権の「敵基地攻撃能力」は、イスラエルの「自衛権」を認めるという前提から始まるイスラエルの「侵攻」と同じことを可能にする。日本がイスラエルと同じことができるようになっていることは、忘れてはならない。

3.格差と分断が急進する日本
 日本では、働く者の賃金は減っているが、金持ち・大企業は潤っている。格差は急速かつ大幅に広がっている。(中略)東京の物価の上昇は10月には拡大傾向が見える(以下で述べる数字は7月段階で把握したものに基づく)。

①実質賃金連続ダウン
 4月の実質賃金は前年同月比3.0%減、5月も1.2%減で14カ月連続のマイナス。春闘「賃上げ」の後でも、物価上昇に賃金が追いつかない。
 総務省の家計調査では、2人以上世帯の4月の消費支出は物価変動を除く実質で前年同月比4.4%減少した。節約したのは、食料が1.1%減に対し、教育費は19.5%減、仕送り金は40.8%減とケタ違いだ。とりあえず減らせるものを減らすが、将来展望を持てない庶民の実情がよく分かる。
 一方、実質賃金の計算に使う消費者物価指数は、対前年比で4月は4.1%増。3カ月ぶりに4%を超え、6月も22カ月連続で3.3%増。名目賃金の伸びを大きく上回った。8月にも1000品目が値上げされる。連合は、賃上げ率が30年ぶりの水準となったと自讃するが、その数字でも実質賃下げだし、300人未満の中小組合では随分と賃上げ率は低い。
②消費者ローン、伸び最大(中略)
借金しないと生活できない人が増えている。
③企業配当最高15兆円
他方で大企業と富裕層は大儲けをしている。企業配当は史上最大である。日銀の「異次元の金融緩和」は、結局金持ちにのみお金が回る結果となり、株や不動産の暴騰を生んでいる。労働者との格差に驚く。
 海外取引のある企業(大企業はすべてそうだ!)は円安も追い風に、軒並み高収益を上げている。庶民には物価高の原因たる円安だが、大企業・金持ちには稼ぐチャンスなのだ。「金融緩和」で余った金で稼ぐ大企業・金持ちと賃金下落に必死で対応する労働者・庶民。これほどまでの格差は、どう言おうと正当化できない。
④不公平な税制
 1990年と2020年の税総額を比べると、トータルは60兆円ほどで変わらないが、消費税が13.1兆円増えているのに対して、所得税は6.1兆円、法人税も6.1兆円減っている。つまり消費増税分は富裕層と大企業の減税に回っており、格差の拡大に寄与しているのである。
 そして2022年度の国の税収は史上最大、71兆円だ。「低成長で税収増の不思議」だが、一番の伸びは法人税収で、コロナ禍で景況感に関係なく大企業の収益増加が寄与している。所得税では給与所得の伸びは10年間で3割ほどだが、配当所得課税は何と3倍以上に伸びている(21年度/11年度比)。
 この税収はものの見事に日本経済の現実を反映している。金融所得優遇=富裕層優遇という階級社会を見事に表している。
金融所得は誰がどれだけ納税したか、明確にならない。配当課税は20%の一律だから、金持ちほど税負担割合が小さくなるということだ。1億円を越える金持ちは所得のほとんどが配当だから、20%のみの税負担である。
 岸田政権は当初、この金融資産課税を強化して再分配を進めると言っていたが、あっさり撤回した。政権の正体がはっきり見えたと言うべきである。再分配のためにも労働組合の力が必要だ。
⑤最低賃金、同一労働同一賃金の現状
 一方で最低賃金は平均1000円を超えたとはいえ、地域別格差が大きく、実際に1000円を越えているところは少ないままだ。非正規労働者の賃金は、最低賃金に張りついている。「働き方改革」は絵に描いた餅で、同一労働同一賃金など、非正規労働者にとって夢物語と言っていい。

4.日本の政治は激しく劣化し、「新しい戦前」、戦争への道を進む
 「理にかなうか否かでなく、開き直ってこれは私の信念だと言う方が政治的果実を得られるようになってしまった」(岡田憲治専修大教授)とされる。そこには理詰めの議論はない。今の日本政治を端的に表現している。

①岸田政権の軍拡増税・原発推進路線の強行と改憲策動
 防衛3文書の改定と、防衛産業強化法、防衛財源法による軍拡大増税が目前だ。しかし、岸田はコロナを5類に引き下げても、政治で生活を支援しない。結局庶民のためには何もしない。さらにGX(グリーントランスフォーメーション)による原発推進路線への転換が強行される。
②新しい資本主義と労働市場の三位一体改革
 新しい資本主義実現会議は、次の「改革」を三位一体で進めるという。①リ・スキリングによる能力向上支援、②個々の企業の実態に応じた職務給の導入、③成長分野への労働移動の円滑化だ。
 リ・スキリングと言うが、結局は「竹中平蔵」に象徴される「人材会社」がもうけるだけだ。辞めていく労働者を優遇する企業はあり得ないので、結局は労働者を辞めさせるための方策として利用される。また成立した「フリーランス新法」はフリーランスを事業者として扱い、労働者保護からはずす。個人事業主とされる人たちに労働法上の保護を与えよとの私たちの主張を強める必要がある。
③「新しい戦前」にするな
岸田は、「安倍政治の継承」と言いつつ、安倍より悪い事態を実現した。日本の政治は、民主主義の危機に直面している。「新しい戦前」という時代に入っているとも言われる。労働組合の存在が問われているとも言えよう。

5.日本の社会全体の荒廃・劣化
 社会構造の大変化が起きている。最近の「闇バイト」による強盗事件の頻発や自衛官発砲事件など、生活不安が拡大する中で、その解決の道筋が見えなくなって、暴力がむき出しになっている。

①「国際的地位」も低下

 かつて「ジャパンアズナンバーワン」と言われ、一時は世界1だった国際競争力ランキングは今や36位だという。36%の人々が年収300万円以下で生活している。国としての赤字も拡大していく。5月の貿易赤字は1兆3725億円、人口減少とともに日本は縮む。
②悪くなる社会・ジェンダーギャップ
 経済が縮小したとしても、普通の先進国では社会がそれなりに成熟するのだが、日本は全くその傾向が見られない。日本の人権状況はどんどん悪くなっている。
 世界各国の政治や経済などの「男女平等」度合いを指数化した2023年版「ジェンダーギャップ報告書」を、世界経済フォーラム(WEF)が6月21日に発表した。日本は調査対象となった146カ国のうち125位(前年は116位)で2006年の発表開始以来、順位が最低だった。

③少子高齢化の実態
「所得300~600万円の子供がいる家庭は44%の衝撃 10年で21ポイント減、『子供を持つことが贅沢』の時代に」と報じられている。6月21日、日本経済新聞が紹介した。世帯主が20~30代で、年間所得300~600万円の世帯のうち、子どもがいる比率は44%(20年)。10年間で21ポイント下がったという。一方、600~1000万円の世帯では、ほぼ横ばいが続いているという。
④社会のあり方が政治を規定
 社会学者の西田亮介さんは、維新の伸張に関して「『政治的に正しいこと』をあまり気にしない人たちを、コアな支持層としているからではないか」と言う。そうではなく、他者を幸せにすることを考え、他者と協力して進む社会をイメージするなら、労働組合の役割の大きさもまた分かるのではないか。
⑤メディアの劣化
 こうした日本社会の現状を見るとき、メディアの劣化に着目せざるを得ない。一例を上げれば、最近の朝日新聞の「インディーズ候補」という記事では、当選した候補者が暴力的なヘイトスピーチをしていたという事実(ネット上では広がっていた)を全く記載せず、結局その記事(オンライン)自体は取り消したものの、その理由も説明しないという信じがたいやり方がなされている。「スキマバイト」を紹介する記事でも、その問題点を全く指摘していない。私たちは、新聞報道についてももはやそのまま受け入れることはできない状況にある。

32期(2023-24年度)活動方針

1.組織維持(略)
2.組合員を増やす取組み(略)
3.対外共闘
 労働者の権利拡大のための全国的な運動と連帯し、その闘いを支援する。

 私たちのユニオンは、コミュニティ・ユニオンネットワーク(全国・首都圏)及び、中小労組政策ネットワーク(中小ネット)の二つのネットワークに所属し共闘関係の二本柱としてきた。両ネットの一員として更に関わりを強めていく。また「雇用共同アクション」にも参加している。この活動も強める。
そうした枠組みの中で、全国一般全国協議会や東京労組との関係も作られており、共闘関係の拡大にさらに取り組みたい。とりわけ、東京労組とは日常的に同じ空間にいるので、できるだけの協力関係を構築すべく、力を尽くしたい。
 NU東京との共闘を更に強化しよう。当面、そのための協議を始める。さらに東京労組や中小ネットなどの争議支援に取り組んで、共闘を拡大したい。

4.日常の組織活動等
・月に1回の争議交流会と学習・交流会を定期的に開催する。
・前記から行なわれているように、活動を組織的に集約するために、月1回(一応火曜日を想定する)夜、役員や執行委員が定例的に集まって「業務委員会」を開催する(組合員の参加も歓迎する)。
・月1回ないし2回、金曜日の夜に組合員がユニオン事務所に集まる。そして、さまざまな相談を集中する日とする。そこに組合員が集まって相互に助け合って相互に相談に応じる。その金曜日夜は組合員が、特別な案件を抱えていなくても集まる時間として設定しよう。
・争議や職場の困難を抱える組合員の団体交渉には、できるだけ他の組合員が参加し、協力して交渉に当たることにしよう。
・繰り返すが、ふくろう便編集委員会、高年法問題対策会議、PIP対策会議、〇〇争議対策会議など、できるだけオープンに、複数の組合員が結集して議論しながら方針を生み出す仕組みを作る。
・運動に伴う「作業」は、経験がなくてもやる、という作風を取り戻す。
・労働相談の受け手も、そんな経験から生み出す。
・様々な集会に参加し、他労組との交流にも参加する。
・事務所はそのような準備の場所であり、そのために活用する。
・職場活動を展開して支部結成をめざすために、ユニオン加入通告時などには、必ず組合活動保障のための「便宜供与」を要求する。その内容は、掲示板設置や郵便物・FAX等の受け継ぎを必須として、その他必要事項とする。特に、支部が形ある活動を展開するには、こうした職場に根付く仕組みが不可欠なので、必ず要求し、交渉によってその実現を図ることとする。その後の職場での運動を展開するためであり、労働組合の存在を広く職場にアッピールするためでもある。

5.労働組合の社会的課題にも取り組もう
(1)大企業の内部留保を吐き出させ、累進課税を強化、生活一時金獲得へ!
 大企業の内部留保はを吐き出させ、同時に中小企業助成策を拡大させ、生活一時金を勝ち取る闘いに着手しよう。
法人税の税率は42%から、新自由主義政策のもと年々下げて現在23.2%。所得税の最高税率も60%から45%まで引き下げられた。一方消費税は3%⇒5%⇒8%⇒10%と引き上げられている。1990年度と2018年度の税収の推移を比べると、税収の総合計が60兆1000億円から60兆4000億円と変わらないのに、法人税と所得税は減っている。その減少分を丸々消費税が埋めている訳だ。法人税を払っている6割は大企業で、最高税率の所得税を払っているのは富裕層。この30年間、大企業と富裕層は減税で恩恵を受け続けてきたわけだ。この税率を旧に復し、累進税率を強化して、大企業・富裕層に正当に負担をさせ、再分配を強力に進めることが不可欠だ。

(2)労働は時間で評価されることを確認し、フリーランス・個人事業主だから労働者でないとする攻撃をはね返そう
10月に厚労省から「新しい時代の働き方に関する研究会」報告が出た。その中心である「守る」「支える」について、次のように言っている。

※ ここまで述べた「守る」「支える」を実現するための労働基準法制について、具体的な制度設計を検討するに当たって、押さえるべき考え方を以下のとおり整理する。
①変化する環境下でも変わらない考え方を堅持すること
②個人の選択にかかわらず、健康確保が十分に行える制度とすること
③個々の働く人の希望をくみ取り、反映することができる制度とすること
④ライフステージ・キャリアステージ等に合わせ、個人の選択の変更が可能な制度とすること
⑤適正で実効性のある労使コミュニケーションを確保すること
⑥シンプルでわかりやすく実効的な制度とすること
⑦労働基準法制における基本的概念が実情に合っているか確認すること
⑧従来と同様の働き方をする人が不利にならないようにすること

※ また、経済社会の変化に対応して変わりゆく労働基準法制の適切な履行を確保するためには、労働基準監督署による事業場の臨検監督を主たる手法としてきた労働基準監督行政の在り方について検討する必要がある。
 全体の内容は抽象的だが論点は重大だ。「守る」中身は「健康確保」だけ。それも、アプリなどを使って健康をチェックするというもの。労働時間管理には触れず、ワークライフバランスなどにも全く触れられていない。その上で、働き方の多様化に対応するように労働者を「支える」と言っている。
?働き方の「多様化」に対応して、「労働者」概念を検討すると言い、「事業場」単位をはずすとも。明らかに労基法の「一律規制は見直す」方向をとっている。また、労働組合(集団的労使関係)を前提せず、「1 on 1」等との表現を使って、労働者個人と企業の「コミュニケーション」を強調。結局は、「上層」労働者の個人事業主(フリーランス)化の促進を狙うということだ。本久教授(國学院大)は、「実労働時間規制をやめる方向だ」と指摘、上層と下層はフリーランス、真ん中の限定正社員や非正規労働者は規制が残っても、実質的に時間規制の力が及ばなくて、低賃金状況に変わりはないということだ。
 フリーランスにも触れてはいるが、そこに労基法を適用するとは言っていない。逆に、総フリーランス化で、労基法のいらない世界を想定しているように見える。労働基準監督官の不足は指摘するが、増員は言わず、AIの活用などで改善する、と言うのみだ。
 こうした方向の延長上に、労働組合不要論が出てくるのは明白であろう。この流れには断乎として抗したい。
※ そして、具体的に労働時間問題に注目し、以下の諸点を(特に職場での)活動の重点に据える。
①残業は使用者の一方的命令ではできない。必ず、労働者本人の同意を得る。36協定を厳格に結ぶ
②固定残業代制度を許さない
③在宅勤務が行なわれるなら、時間管理を厳格に
④シフト制について、労働者への不利益を許さない
⑤高度プロフェッショナル制度反対、裁量労働制拡大反対、さらに両制度廃止を


(3)次の時代のユニオンを確立するために、委員長の世代交代を図り、新たな役員態勢をつくりだそう!
 この課題は、以前から議論されてはいるものの、具体的解決が見えていない。向こう1年間で議論し、次の大会では確実に実現する。

以上、WEB上に掲示するにあたって、原文を一部省略・要約してあります。
※2023~24年度は、2023年11月18日第33回定期大会から、
 2024年11月の次回定期大会までの期間です。